最新作『無人地帯 No Man's Zone』(2012)
〜福島第一原発事故、失われゆく風景、そこに生きて来た人々〜
第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品

10/30/2007

消費期限、賞味期限の偽装についての素朴な疑問

 お伊勢参りの定番、赤福餅が製造日の表示偽装で営業停止になり、そこで代わって売り上げが伸びていた御福餅も製造日表示の偽装で、営業自粛だそうだ。なんだかこの手のニュースを聞かない日はないくらい、ほとんど流行としか思えないのだが、「そりゃそういうインチキはいけませんよ」というのは当たり前ながら、根本的な疑問が湧いて来た。

(注:写真はただの彩りで、本文と関係ありません)

その1) そもそも偽装はなぜ発覚したの?

 当然、内部告発なんだろうけれど、逆に言えば消費期限切れないし賞味期限切れの食品を実際に食べた人のあいだで食中毒が発生したわけでも、商品自体を調べてみたら品質が劣化してたことが分かったというわけでもないらしい。保健所だとかではその偽装した食品の品質を調べたりはしていないのだろうか?

その2) そもそも消費期限、賞味期限って意味あるの?

 上記の疑問から当たり前のように思いつくのが、期限切れの商品を消費した、つまり食べたお客がそれこそ何年にもわたって大勢いるはずなのに、食中毒だとかが起こってないのか、という疑問。いやもちろん、起こっていなくて幸いなのだが、まだ十分食べれるものを「期限切れ」として捨てていることになりゃしませんか? だって今の世界は先進国でこそ飽食の時代ながら、全体的には慢性的な食料不足だし、今後より深刻な食料危機が予想されているんじゃなかったのかしらん?

その3) そもそもなんで偽装する必要があったの?

 で、「もったいない」と考えているうちに当然考えなければならなくなるのは、なんでそんな偽装をしたのかということ。御福餅の場合はまだ遠隔地での販売分の製造日を一日ずらしていたというから動機は分かるのだが、どう考えても、期限切れ商品を偽装して売ろうが正直に売ろうが、売り上げも、原材料費や製造コストも変わらない。偽装しているぶん余計に在庫期間を抱えることになるのだから、倉庫代のぶんだけかえって余計に金がかかってるじゃないか。ムキ餅、ムキ餡と称していったん製造した商品をバラして、なんていうのに至っては経営者はなにを考えてそんな余計な手間をかけて違法行為をやってるのか、さっぱり意味が分からない。

 要するに余剰生産を延々と続けて来た、ということなのだろう。売れ残った商品をなんとか売ろうとして偽装に走ってるとしか考えられないのだから。しかしそれが延々と何年も、何十年も続いているとはどういうことなのか? まともな経営者だったら、作った商品を売り切れない現状が続いていたのなら、とっくの昔に生産量自体を縮小して経営合理化を図っているはずである。そんな経営を続けていても倒産していないのがいちばん不思議だ。

 もちろん生産ラインを縮小すれば、そのぶん従業員を減らすことになり、要するにクビを切らなければならないという困ったことにはなるだろう。だからっていちいち偽装していたり、完成した商品をバラして再利用する手間をかけるのも雇用の確保というのは、いくらなんでもやり過ぎだ。それが十年も二十年も続いて来たというのは、考えれば考えるほど我々の常識を超えている。それとも、僕はまともな会社勤めの経験がないせいで、この程度のことを不思議に思ってしまうほど世間知らずだというだけなのだろうか?

 ちなみに一連の偽装ニュースで個人的にいちばん印象的だったのは、伊勢の老舗・赤福餅のどうもせいぜいが40代、それもずいぶん子供っぽく見えた社長サンの会見。この人、本当に偽装のことなんてまったく知らなかったんじゃない? 創業者一族だかの跡取りおぼっちゃまなんだろうが、ある意味でこの人の「社長」の肩書き自体が偽装の虚構だったのかも知れませんネ。

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