3/02/2009

闘う映画/旅する女優/ジュリエット・ビノシュ

東京日仏学院で女優ジュリエット・ビノシュを特集するそうです。今年のフランス映画祭の団長さんなんだそうで、だから特集しなければならない事情だったりもするんだろうが、フランスのスター女優としての有名作品だけでなく、女優ビノシュの挑戦とも言えるハードコアな、それも外国の作品をちゃんと潜り込ませているのがさすがは日仏学院映画部門です。

しかもそのうち一本はたぶん、これが日本初上映。最近日本でまったく近作が公開も上映もされないアベル・フェラーラの超弩級問題作『マリア Mary』。いやこれがおもしろいんだ、相変わらずのフェラーラ流、ぶっきらぼうにして豪速球に過激で。

苦悶するカトリック映画作家アベル・フェラーラがとりあげるのは、マリアはマリアでも聖母マリアではなく元娼婦マグダラのマリア。実は聖書考古学の最新研究では初期キリスト教ではマグダラのマリアがペテロ、パウロと並ぶイエスの最重要弟子だったという仮説が有力になっているらしく、この映画はそれを前提に,かなり傲慢なアメリカ人映画監督(マシュー・モディーン)が主演も兼ねたイエス伝映画の撮影を終えるところから映画が始まる。

   

監督はニューヨークに戻るが、監督の恋人でマグダラのマリア役を演じた女優(ビノシュ)は割り切れないなにかを感じてロケ地のイスラエル、パレスティナに残る。ニューヨークではTVの人気キャスター(フォレスト・ウィテカー)がキリスト教の意味を問い直すトーク番組を企画、監督に出演をアプローチする。三人の彷徨のなかに中近東、アメリカそれぞれの現実を覆う暴力の罪と罰を問うフェラーラの、『バッド・ルーテナント』以来の渾身の,荒々しい力作。

もう一本は東京フィルメックスで一昨年に上映されて絶賛された傑作ながら、やはり公開はされそうにないアモス・ギタイの『撤退 Disengagement』

   

そういえばどっちもイスラエル/パレスチナがらみですが、ビノシュ女史は中近東問題にもすごく関心が高いそうで、ギタイの前作『フリー・ゾーン』も当初は彼女が主演候補だったそうですが、自分が登壇して質疑応答をやる映画に選んだのも、『撤退 Disengagement』。日仏学院で、フランス映画祭関連イベントでも、イスラエル映画をクロースアップするというのは根性あります、この人(あともちろん、日仏学院の坂本さんもエラい)。

「ジュリエット・ビノシュ レトロスペクティヴ - 映画と共に旅をする女優 -」は今週末から。詳しくはこちら http://www.ifjtokyo.or.jp/agenda/festival.php?fest_id=56

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