Youtubeでルビッチの30年代作品をたくさん見つけたついでに、探索していたらなんとこんなものが…
レオ・マッケリー監督の『明日は来らず』Make Way for Tomorrow (1937)、全編です(嘘だろ〜)。実は小津安二郎の『東京物語』がこの映画を底本にしているというのは、脚本の野田高悟氏が明かしていて有名な話で、小津さん本人は「見ていない」と言っているのですが、しかし『東京物語』の10余年前に同じテーマを扱った『戸田家の兄妹』(1941)にすでに、『明日は来らず』とまったく同じエピソードがあります。マッケリーでは年頃の娘なのが、小津では中学生の男の子が学校をサボる話に性別が変えてありますけど、お話じたいはまったく同じ。
ちなみに実はイーストウッドの『グラン・トリノ』でさえ、一面ではこのマッケリーの傑作の無意識なパクり、あるいは変奏でもあり…。
大手スタジオ五社全盛期の日本の映画会社では、この名作のプリントを所蔵してたびたび社内で上映し、これとあとキング・ヴィダー監督の『ステラ・ダラス』が演出部や制作部が脚本の構成を勉強する教材になってたという。以前、元・大映の製作部長のプロデューサー、藤井浩明さんと雑談していてこの『明日は来らず』の話が出た時、「何度も見させられた」と聞きました。
なるほど大映お得意の「母もの」なんて、お話はたいがい『ステラ・ダラス』のリメイクみたいなもので、その母ものの大スター三益愛子が出演した東宝映画・成瀬巳喜男監督の秀作『娘・妻・母』も『明日は来らず』のヴァリエーションとも言えるだろう。
ついでにおまけでやはりキング・ヴィダーの異色作『摩天楼』The Fountainheadも発見。ゲーリー・クーパー演ずる建築家は、フランク・ロイド・ライトがモデルだと言われている。ライトといえば旧帝国ホテルは伊丹万作・アーノルト・ファンク共同監督の日独合作映画『新しい土』(1937)にも映っているが、他にも現存して重文になってる自由学園明日館など日本でも活躍しているだけでなく、日本研究、とくに浮世絵マニアで富豪の以来で世界有数の浮世絵コレクションを蒐集したとか、日本にもっともなじみがある現代建築家だったこともあるのか、キング・ヴィダー自身が小津がもっとも尊敬する映画監督だったりして日本ではとくに人気があった監督だし(ヴィダーの自伝には『麦の秋』を見た日本の少年からもらったファンレターがとても嬉しそうに引用されている)、この映画も日本では公開当時評価が高かったのに、今ではなかなか見られなくなっている。
アメリカ人の日本映画研究者にこういう話をすると、驚く以前に「マッケリーって誰?」ということになっちゃうのが悲しいんですが…。
Make Way for Tomorrow (1937) Beulah Bondi, Victor Moore
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