最新作『無人地帯 No Man's Zone』(2012)
〜福島第一原発事故、失われゆく風景、そこに生きて来た人々〜
第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品
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10/31/2007

防衛をめぐる悪質な冗談(としか思えない現実)

F2支援戦闘機が離陸に失敗して墜落炎上した。よりによってこのタイミングに。なにしろ防衛専門の輸入商社と防衛事務次官の癒着がスキャンダルになってるこのときに、一機120億円の“国産”戦闘機がこの事故である。

F2を「国産」と呼ぶこと自体かなり無理があり、実態はアメリカのF16のマイナーチェンジ版に過ぎないこの飛行機、マイナーチェンジのわりにはえらく開発費が膨らんで、それが一機120億というバカみたいなお値段の一因になっている。元々三菱重工製のF1の後継機として純国産を目指したはずが、F16の製造元の猛烈なロビー活動で日米共同開発になった、ということになっているけれど、日米貿易摩擦華やかなりし時分に決まった話だし、一民間企業のロビー活動だけでそう決まったと考えるのは無邪気すぎるでしょうね、やっぱり。

現在進行形の防衛次官(前)スキャンダルでひとつの具体的な便宜供与疑惑は、開発中の輸送機CXをめぐるものだが、こちらも国産を目指しながらもエンジンは米国製、で製造元ジェネラル・エレクトリック社の元の代理店だった防衛商社の専務が独立したついでに代理店業務もゲットして、という事情が、常識的にいってどうみても贈収賄にしかみえない接待癒着の背景事情としてある(で、元の会社の方は例のキューマさんとおつきあいが深かったようで)。

言うまでもなく防衛費は永らく政府予算のなかでの聖域であり続けて来たし、今でも実態はそう変わらない。「お国を守る」の大義名分で、何が起こるか、どんな敵が攻めて来るか分からないから万全を、という意識を前提とされてしまえば、「もったいない」と経済原理を導入することはためらわれるし、「抑止力」という軍需産業にとってはまことに好都合な眉ツバな理論まである。というわけで「行政改革」どこ吹く風で、湯水のように国家予算使いまくり、税金注ぎ込みまくりができる分野で、その足下を見ているのかどうかは知りませんが(まあ「常に敵を上回る最新鋭を」と言われれば、これも文句は言いにくいし)、この黄金のヤマで癒着が起きない方がおかしいのかも知れない。

もっとも、これぞ我が国のいわゆる「平和ボケ」の典型としか言いようがない話でもある。通常、安全保障というのはシビアに現実的でなければ意味がないわけで、問題にすべきは戦争ゴッコの幻想ではなく、現実に起こりうる戦争の予測でなければおかしい。その予測の範疇で必要な装備を備えるという防衛費ならともかく、我が国の防衛費の使い方の現実はちっともそうなっていない。たとえば航空自衛隊の主力戦闘機であるF15は攻撃機としての使用を考慮した設計のアメリカの大型戦闘機で、日本国の領空の防衛には必要でない性能がかなりあって、これもかなりバカ高い。なにしろ本来は世界中どこでも対地攻撃ができる性能を建前上制限するように改造して、結果として米軍装備のF15よりももっと高価なのだからいったいなんなの? イージス艦だって日本の領海を守るだけであれだけの能力が必要なんでしょうかねぇ。どう考えても憲法上の制約内で必要とは思えない高価な装備に、日本国政府は大金を注ぎ込み続けているのだ。それもほとんどがアメリカ製ないしアメリカ原産(莫大なライセンス料が支払われる)である。醒めた目で見れば、国土防衛を言い訳にアメリカの軍需産業に貢ぎ、その軍需産業がたとえばブッシュ親子やその前のレーガンの有力なロビー勢力で…ということにもなってしまう。

こういう疑念を呈すると、すぐに「ミギ」の皆様から「北朝鮮のような狂った国が」と言われるのだが、それを言うなら、だからこそ日本の防衛費の使い方も安全保障政策もおかしいとしか思えないのだ。だって今の自衛隊の装備で、仮に北朝鮮が日本に戦争をしかけた場合、防衛出来ますか? F15だって、F16をベースにしたF2だって、そもそもまだ冷戦という思い込みがあった時代に旧ソ連を仮想敵に想定した配備でしょうが。ロクな飛行機はないけどミサイルと核弾頭は持ってるらしい北朝鮮相手に、どれだけ意味があるの?

いやまあ、自民党の右派あたりが本当は北朝鮮でなく中華人民共和国を仮想敵とみなしてるのは公然の秘密なのだが、それこそ中華人民共和国とどうやってこの狭い国が戦争するねん? 人口なんてあちらの10分の1ですよ。それに現在の日中関係や中国の内政からして、中華人民共和国が日本を侵略しようとするなんてこと、あり得るんでしょうか?

実を言えば、恐らく「防衛」「安全保障」の専門家ほど分かっているはずだ。現代の世界で、武力で日本の安全保障を担保しようという発想自体が、およそ現実性を欠いているのである。地勢学的に言って、現代の兵器ではこの立地条件の国が攻められたときに武力で守るなんて、物理的に不可能に限りなく近い。それこそ北朝鮮の不良品ミサイルだって、撃ち落とす装備なんてあり得ないんですから(ブッシュはんはミサイル防衛構想とかいうずいぶん非現実的なお話をでっちあげて、軍需産業をもうけさせてはりますが)。

本日付けでインド洋における海上自衛隊の給油活動は終わりになるわけだが、これを継続しなければならないと主張して来た政府の理由付けもコロコロ変わってなかなか笑わせてもらえた。さてこれで「国際社会における日本の地位」が低下するかどうか、よぉく見ておいた方がいいでしょう。たぶんそんなことはまったくない。対米関係ですら、アメリカの世論は「テロとの戦争」反対に傾きつつあるどころか興味すら失って来てるんだし、もうすぐ大統領選挙ですよ。なんでそういう当たり前の分析にのっとって外交戦略をとれないのかが、不思議ではある。

むしろ小沢民主党が「国連主義」で継続を突っぱねたことがもっと知られれば、日本が世界の新しい流れをリードしたことにすらなるかも知れませんぜ。言い換えれば、外交ってこういうふうに正当性の大見得を切ってやることなんですが、世界でもっとも大義名分を主張できる憲法を持ちながら、それを有効利用もできないんだから…。

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