最新作『無人地帯 No Man's Zone』(2012)
〜福島第一原発事故、失われゆく風景、そこに生きて来た人々〜
第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品

6/02/2009

このニッポン国に気が滅入る話

昨日の日曜日、京橋でたまたま民団が北朝鮮の核実験に抗議するデモをやっていて、そのデモを右翼が妨害して警察が出て来るという、なかなか珍しくもとんでもない光景に遭遇した。

フランス人の友達と会う予定だったので、この場に友達がいていちいち説明するハメになったら面倒だなぁ、とはまず正直思ってしまったわけで、民団と総聯の違いから、なぜ日本に日本生まれか日本に定住している韓国朝鮮人が大勢いるのかまで説明しだすと、1911年まで歴史を遡ることになって大変な手間になる。

それにしても実にイヤな話だ。自分が所属することになっているこの日本という社会の醜さがいろんな意味で露呈している風景なわけで。それにしても民団の人々が、雨の中そろいのビニールの合羽姿で(というのは別に意図できでもなんでもないのだが、見た目には異様には写ってしまう)、次から次へと、日本語とハングルのプラカードを掲げてデモをしているのは、見ていてちょっと辛かった。北朝鮮の現政権が核実験をやったりして暴走しようが、在日の人々には関係ないことであるどころか、韓国であれば敵対国家(それはそれで問題だとはいえ)、北の核武装の脅威をもっとも直に感じざるを得ない国だ。なのに日本人のなかには、それをごっちゃにして差別したがる連中がいる。

一方で、韓国の本国では、在日韓国人は一部の右派的な人々から「日本帝国主義よりも許せない」として差別されているそうだ。日本の支配下で生存の必然から運命に翻弄された挙げ句、どこにも帰る場所がない。せめて地方参政権くらい与えてなにが悪いのかよく分からないのだが、素っ頓狂に妄想的な理由から反対するような連中が、国会議員のなかにさえいるのだ。もっと言うなら、日本国もとっとと在日の人に出生地主義を採用して自動的に国籍を付与するのと同時に多重国籍を認めればいいのに。「日本が日本でなくなる」? 70年も80年もずっと日本で生活している人々は、立派に日本社会の一部です。

民団と総聯の違いなんて、実は日本人でさえ、とくに在日韓国朝鮮人を差別したがる連中ほど、分かっている人すら少ない。北朝鮮がなにかをやると、朝鮮籍の在日だけでなく韓国籍の在日まで、民団も総聯もいっしょくたにされ、また差別されたり弾圧されるという恐怖が、染み付いているのかも知れないし、しかも実際にこのデモだって右翼が妨害しようとしていたわけだし。

パチンコだとかのギャンブルは決して好きではないし、パチンコが現代の日本で最大の娯楽産業になっているのも、賭博は違法なのにライターの石等の「景品」が換金されたりする非合法の部分があり、そこで警察と癒着しているのも問題だとは思う。しかしそこだってうかつに批判もしにくいのだ。そういう批判をする言説の大半が、実は偽装された在日韓国朝鮮人差別だったりするのもまた、未だにこの国の現実なのだから。

一点だけ壮快というのでもないが、よくぞ言ったと思ったのは、デモ隊が「私たち在日韓国人も4万人が被爆した」、だから核実験、核兵器の拡散は許さない、と言ったところだ。

それに引き換え日本国政府は、唯一の被爆国であり、被爆者も大勢いる国だからこそ、安保理議長国のロシアが制裁決議に日本の意向を優先的に反映させようとまでしているのに、その正論の部分にほとんど関心を示さず、北朝鮮脅威論ばかりブチ上げている。オバマが核廃絶演説をやり、ロシアもすでにその核軍縮政策に同調しようとしているこの時代だというのに。日本人としてのプライドもなければ、正義や正論の感覚もなく、現実的な外交判断もできない。あ〜あ。

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