最新作『無人地帯 No Man's Zone』(2012)
〜福島第一原発事故、失われゆく風景、そこに生きて来た人々〜
第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品

2/21/2008

いったいこの国は何を守っているのか?PART2

またも防衛関係の不祥事だ。なにしろ最新鋭の自衛艦が事故で漁船を撃沈してしまっただけでもおおごとなのだが、事情が多少は分かって来るに連れて、まず「普通絶対にあり得ないだろ、そんなの?」と耳を疑うような人為的ミスだった疑いが濃厚になって来た。だいたい自衛艦が漁船を目視した時間が事故当日の昨日では2分前で慌てて減速したが間に合わず、という話だったのが実は12分前にはいったん見えていて、その約10分後の午前4時に見張り要員の交代があり、その数分後に事故が起っているということになるようだ。つまり「引き継ぎをちゃんとやってなかったんじゃないの?」というのがまず呆れるし、日本近海に入って漁船などがかなり多く航行する海域に入ったというのに、自動操舵のままだったということを、防衛省がしぶしぶ発表した。はぁ…?

防衛省の発表する事実関係がコロコロ変わるのも気になる。つまり、この期に及んでなんとか責任回避をするために情報をちゃんと上に上げていないとしか思えないでしょう? 責任逃れがお役人の習い性であるのはその通りながら、曲がりなりにも軍隊である。兵器を扱い、有事ともなれば武力を行使する、それだけに最大級の規律が要求され、常に自分たちの命も他人の命もリスクにかけている自衛官が並のお役人と同じ感覚というのはさすがに困る。防衛大臣の石破クンは必死に怒ってみせているが、結局たるみきって組織防衛にしか興味がない海千山千の将校さんたちに手玉にとられているようにしか見えず、与党のなかからも「そういう問題じゃないだろ」と笹川一族や先代の防衛大臣の小池から突っ込まれている始末だ。いかに石破クンが安全保障の専門家を気取ってみたところで、しょせんはただの軍事オタク。この際「能力不足」でとりあえず更迭した方が石破クンにとってもいいような気がする。

それにつけても海上自衛隊にとくに不祥事が多いのはなんなのだろう? ついこないだも隊員が勝手に(規則違反で)持ち込んだ電気器具が元で艦橋が火事になった事件とか、あろうことか私物のパソコンに一応最高軍事機密であるはずのイージス艦のデータをコピーして漏洩しちゃったとか、鬼の鉄拳制裁が名物だった帝国陸軍、帝国海軍に較べてずいぶんのどかなのは人権上は進歩なのかも知れないが、そんなたるんだ人々に巨大な艦船というそれだけだってかなり責任重大な代物、一歩間違えれば人殺しの道具を任せておいて大丈夫なのだろうか?

もっとも、「たるんでいる」のは我が自衛隊だけではない。イラク戦争のときには米軍のミサイルが過って友軍の英国のヘリコプターを撃墜してしまったとか、結婚式をゲリラの集会と間違って空爆して虐殺してしまったとか、ジュネーヴ条約をこっそり破って捕虜を虐待するのは昔からとはいえ全裸にした男性捕虜に人間ピラミッドを作らせて女性憲兵が記念写真を撮っているとか、いくらなんでもあり得ないでしょうという珍事が続いている。(ちなみにそのアブ・グレイブ刑務所事件に取材したエロール・モリス監督の新作ドキュメンタリー『SOP Standard Operation Procedures』が先日のベルリン映画祭でドキュメンタリーとしてはもしかしたら初の審査員特別賞を受賞しているので、早く見たいものだ。)

沖縄では基地在住の全軍人に外出禁止令が出たらしいが、なんでもここのところ頻発した事件の犯人はどれも基地外に居住している米軍兵らしい。少女暴行事件の犯人も下士官らしいが…って、一般兵士でももちろん問題なのだが、下士官が? なんだか全世界的に軍人サンの質が低下しているんじゃないかと怖くなって来るのは、思い過ごしだろうか?

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