第二次安倍政権で安倍首相が返り咲いたのは最初、単にそれが自民党の政権だったこと、そして安倍晋三がその自民党の御曹司(祖父は岸信介)だったからに過ぎなかった。
政治主導を掲げて政権交替した民主党が、鳩山内閣の退陣の後は菅・野田と、財務省主導で国民に分かり易い説明を欠いた政策を押し進めて期待を裏切った。ならば最初から官僚機構との対決姿勢なぞ示さない、むしろ官僚にしっかり支えられた自民党政権でもなにも変わらないし、むしろ安定感はあったわけだ。
特定秘密保護法や安保法制を強行採決したのも、言論の自由が危うくなったり戦争に巻き込まれる不安の一方で、「でもアメリカの要請ならしょうがない」ともなるのだし、現に「アメリカに逆らって普天間基地を『最低でも県外』と言っていた民主党政権はどうなったか」という比較例もあると、こうした2法案でもそんなに危うい誤りだとも思えなくなるのだろう。
実際、安倍内閣が高支持率を維持して来れたのには、外交で失敗しか実はしていないこと、とりわけ対米関係がどんどん悪化して日米の信頼関係が最悪になっていることを、マスコミが安倍に配慮して(ないし官邸の圧力と外務省ブリーフィングの鵜呑みで)隠し続けて来たからが大きい。
だが今回の都議会選挙で、党内的には安倍が「選挙に強い」と思われて来たその神話が、小池百合子にぶち壊された。
まず小池は安倍と違って本当に選挙に強い(戦い方を心得ている)のと、それ以上に、安倍が選挙で連戦連勝して来たのは投票率自体が低かった、つまり政治的な無関心が日本に蔓延し、不満票の受け皿もなかったからに過ぎなかったことが、いかに小池の人気があるとはいえ新人・いわば無名の「素人」が多数の都民ファーストの会が、その「素人」でも圧勝したことで証明されたのだ。
話を遡れば、2012年暮れになぜ民主党に自民党が圧勝したのかといえば、民主党政権が国民が「裏切った」からというだけでなく、むしろより重要なのが、鳩山由紀夫が対米従属も変える、官僚支配も改める、と公約していたのにまったくそれが出来ないままに、国民には、アメリカと霞ヶ関に潰されたように見えたからだった。
対米従属と官僚主義(それが自民党政権を支えて来た)が政権交替してもどうせ変わらないのなら、政権交替も強い野党も、必要がない。
民主党政権では大きな失政は特になかったし、政権担当能力なら実は自民党と大差ないか、それぞれの野党になった時の国会質問の中身を見れば、むしろ民主党(現民進党)の方が政策にも法制度にも明るかったりする。
それでも日本の政治がアメリカの言いなりで、官僚の力で統治が維持されることが変わらないのなら、政権交替可能な野党は要らないし、「対米従属を変える」などと考えそうな者に政権を与えるのはもっての他と国民がいわば「学習」した、現状を変えたりアメリカのご機嫌を損ねそうな党が与党ではない方が安心だけはできるから、自民党が返り咲き、高支持率を得て来たのだろう。
もっとも、今もなお大きな誤解が蔓延しているが、鳩山の退陣でもっとも焦ったのはオバマ政権だったし、近年で日米の政権間でもっとも信頼関係があったのは鳩山由紀夫とバラク・オバマだった。そもそもオバマと鳩山の政治理念が近いのだから当然であろう。しかし日本のメディアは、そこを必死で誤摩化し隠して来た。
鳩山の退陣は「アメリカに逆らったから」「アメリカ政府の圧力」ではなかったし、少なくともホワイトハウスや国務省はこの政権をパートナーとして(子分・隷属者としてではなく)歓迎していた。普天間基地の県外移設も反対していなかったどころか、オバマ以前のブッシュ政権で既に、東アジアの安全保障上もはや不要となった沖縄海兵隊の撤退すら考慮されていた。
ことオバマ政権は、軍縮によって軍の使う予算を減らしての財政再建を当初狙っていた。「最低でも県外」は鳩山とオバマの交渉であれば、国外つまり沖縄海兵隊の撤退すら十分にあり得ただろう。
鳩山を潰したのは政権の思い通りに基地政策が動いては困る霞ヶ関と、アメリカのなかでは予算を減らされては困る軍・国防総省の、それも在日米軍基地を利権として来た極東担当部門だ。だが日本政府に最大の影響力がある「アメリカ」とは、ホワイトハウスでも国務省でも議会でもなく、この極めて限定的な一部門なのだ。
日米連絡会議というものがあることは知られているが、鳩山は首相になって初めてその実態を知ったという。
アメリカ側がすべて軍人だったことに鳩山は驚いた(というか、そう聞いてこちらも驚いた)。
鳩山由紀夫は元は自民党の代議士であり、民主党で首相になる以前にも官房副長官として官邸に居たこともあった。そこまでの要職にあってもこの実態を知らされていなかったというのも、驚きだ。
普天間基地の移設問題で鳩山が本当に闘っていた相手は、この隠蔽された秘密のシステムに牛耳られた統治機構としての、日本の官僚組織だったのかも知れない。鳩山が叩かれた「トラスト・ミー」発言も、実際にはこの文脈で出て来たものだ。
オバマが心配し、鳩山が「トラスト・ミー」といったのがアメリカ相手の交渉についてのはずがない(相手はそのアメリカの大統領だ)。もちろん日本側をどう鳩山が説得できるかの話でしかあり得ず、オバマもこの官僚機構を鳩山が抑え切れるのかに不安があったのだろう。
その不安もまた、自然な流れだ。バラク・オバマはこの頃相前後して、広島を訪問し原爆投下を謝罪したい意向を鳩山政権に伝えている。鳩山由紀夫自身は歓迎したが、猛反対した外務省が勝手に断ってしまっている。
国民の目には、鳩山由紀夫はアメリカに逆らって普天間基地移設を目論んだから退陣させられたように見えたはずであり、続けて菅・野田の両政権は政権交替時の国民の期待にことごとく反するかのように、霞ヶ関、とりわけ財務省のいわば「言いなり」の財政再建を目標に据え、「税と社会保障の一体改革」が、国民に分かりやすい説明もなく決められた。
元々政権交替の大きなきっかけだった年金の問題も、あやふやなまま終わってしまった。
民主党が2012年暮れの総選挙に惨敗したのは、国民が民主党に裏切られたから、というよりも「日本の政治家はアメリカと官僚には逆らえない」といわば「学習」したからだったと言った方が、正確だろう。
民主党が最初は約束していたような、独立した民主的な新しい日本という夢さえ放棄してしまえば、自民党の政権でいいし、右翼の安倍ならば対米関係でアメリカに逆らわないだろう。
実のところその程度のことで選ばれた第二次安倍政権だからこそ、ずっと高支持率を保ちながらも、支持の理由といえば「他にいない」が常にトップであり続けている。
たとえば就任時のバラク・オバマや、今のカナダのジャスティン・トゥルードーのように国民に希望を与えて人気と期待を集める政治指導者が高い支持率を集めたり、人気は今ひとつでも盤石の安定感と地道な政策で、なんだかんだ言っても国民の信頼感を得ているアンゲル・メルケルとは、まったく違った「高支持率の安定政権」なのだ。
第二次政権になって安倍は4度の国政選挙で勝利して来たが、いつも選挙の直前に突然新しい政策を公約と打ち出しながら、勝ったからといってそれを中心政策に据えるわけでもなく、公約にほとんど出ていなかったことばかりを強行して来た。
安倍がちゃんと守った公約といえば、2度目の消費増税の先送りだけかもしれない。
公約にほとんど示されなかった政策では、安保法制ではさすがに激しい反対の声もあがったものの、通ってしまえばなんとなく「のど元過ぎれば」なんとやら、で済んで来たのはなぜか? 根本的に、国民が政治に関心を失っていた、というかアメリカと官僚機構の言う通りにしてくれればいいのだ、と半ば諦めて来たからであろう。
安保法制でも、国民はなんとなくそれがアメリカの意向だと思い込んでいたのだから、「アメリカの言いなりに自衛隊が海外派兵される」という論戦を野党が張ることはある意味逆効果だった。
果敢に、整然たる論理で民主党(民進党)や共産党が反対論を展開しようが、保守系の憲法学者たちこそが先頭に立って違憲であると指摘すれすればするほど、国民が「日本はアメリカに従い、官僚に統治される国であり続けた方が安心」と思い込まされている以上は、野党は政権奪取からますます遠のくことになっていたのだろう。
そんな「諦め」の証拠に、安倍が勝って来た選挙はいずれも極めて投票率が低かった。昨年には「改憲勢力2/3をついに衆参両院で」と言っても、自民党は得票数だけで見れば2009年に惨敗して政権を失った総選挙以来、支持はほとんど増えていない。投票率が低いので組織票的な固定票だけで「圧勝」出来て来ただけだったし、メディア、とくにテレビも消極的にこうした政権のあり様を支持して来た。つまり、2009年政権交替以前なら各局が党首を並べたテレビ討論を企画し、それぞれの主張や争点を報道して来たのが、第二次安倍政権になってから極端に減っている。街頭演説の映像などで一応選挙報道らしきことはやるが、野党の政権批判の肝心の部分などはなるべく放送していない。
だが今回の都議会選では、投票率は55.1%を記録した。前回の都議会選に較べれば、7.1%の増だ。もちろん浮動票が動いただけでは自民が負けると言っても40議席前後だったろうが、23議席という惨敗(それもほとんどが党落選上ギリギリで、逆に自民が共産党に競り負けた選挙区が8つもあった)は、出口調査によれば旧来の自民支持層が都民ファーストや、共産党にさえ投票していたことが大きな原因だ。
第二次安倍政権の「一強」は、そもそも国民の諦めの産物で、その国民の大多数が政治にまったく興味を失っていたのが、今年に入ってふと気がつけば、安倍というのは幼稚園児や小学生に教育勅語を暗唱させたがる虐待抑圧体質のとんでもない非常識なバカで、しかも汚らしい無責任な噓つきで、その閣僚や幹部はちょっとあり得ない非常識、さらにはかつての自民党ならあり得ない公私混同のえいこひいき野郎とバレちゃったのが、とくに先の国会の終盤からこの都議会選の直前に連発して起こったことだった。
加計学園と森友学園「えこひいき」スキャンダルでバレてしまったのは、「大きな間違いは犯さないだろう」となんとなく思われていたが故に支持率を維持して来た安倍政権(アメリカと官僚には逆らわないから、結果として日本の現状秩序は維持はされるはず)が、実はかつてなら絶対にあり得なかったレベルの「大間違い」というか、野方図かつ身勝手なデタラメをやらかし続けているらしいことだった。
森友学園問題で、超優秀なはずの財務官僚がなんとも不可思議で無理がある答弁を繰り返すのを見て、「なにか変だ」と思った国民も少しずつ増えて来たかも知れない。それが強権的になんとなくウヤムウヤに済まされそうになったところで出て来た加計学園スキャンダルで、安倍政権は致命的な誤りを犯す。
政権が文科省の内部文書を「確認できない」と言い張ったところで、「あったものはなかったことにするわけにはいかない」と出て来たのが、前川喜平・前文科次官だった。なんと安倍政権は、この超エリート官僚を人格攻撃で貶めることで事態を誤摩化そうとしたのだ。
これは二重の意味で重大なミスだった。
まず「出会い系バー通い」を騒ぎ立てて前川氏を中傷して信頼性を失墜させようとしたら、どんどん出て来たのが真逆の、ほとんど「いい人伝説」と言っていい証言の数々だった。「出会い系」もそこに出入りする若い女性の人生の悩みを親身に聞き、真剣に励まし、立ち直らせてさえいたというのだから、これでは菅官房長官の狙いは大外れである。
文書が報道機関(NHKと朝日新聞)や民進党に流れたこと自体を前川氏が漏洩元だと印象操作で決めつけて、以前に天下り問題で辞任させられたことの逆恨みしで出した「怪文書」として葬ろうとしたことが、ことごとく裏目に出てしまった。
前川氏の「いい人」っぷりにはとんだオマケがつく。
これまで日本人の多くは、東大出のエリート官僚というのは冷酷で権力欲出世欲が強い、頭の固い権威主義者であって、しかしちゃんと仕事さえして行政を廻してくれてさえいればそれでいい、と思って来た。だが前川喜平氏は国家試験4位という超エリートでありながら、頭はいいが普通に誠実で真面目で普通かそれ以上に人情の分かる、ちょっとお人好しですらある「おじさん」だったのだ。
だが実はもっと大きな失策が、この隠蔽戦略にはある。
安倍政権が(実態はデタラメなのに)安定感がある、(実態は無能で無策なのに)実行力があると、なんとなく思われていたのは、安倍がというよりも、官僚機構が大きな間違いは犯さないだろうと思われて来たからだ。
なにがあっても(海外のテロ事件でも、大震災でも)安倍自身は「迅速な対応を指示した」と繰り返すだけだが、それでもあとは日本の優秀な官僚機構がちゃんとやってくれる、と日本人はなんとなく思って来た。
震災対応で陣頭に立とうとして、翌日にはヘリで被災地に飛んだ菅直人よりも、官邸で中身のない「迅速な指示」を出すだけの安倍の方が、「余計なこと」はやらないだろう、という消極的支持だ。
もっとも2015年1月のイスラム国人質事件では、すでに外務省を切り捨てようとしていた安倍は自分は動かずとも官邸主導でアンマンに派遣した中山外務副大臣を中心に強引に対応を進めようとして、惨憺たる結果に終わったが、この時は犠牲者への過剰なセンチメンタリズムをメディアが盛り上げてくれたおかげで、なんとか切り抜けることができた。
なにも民主党のように官僚機構と対立する必要もなかったのだ(どうせなにも変わらないのだ)と、安倍政権の4年くらいのあいだ、多くの国民が思い込んで来た。
ところが森友学園をめぐる質疑で出て来た財務官僚の顔を見ていてなんとなく分かって来て、そして前川氏の登場で明白になったのは、安倍政権が官僚機構に凄まじい強権を発揮して、横暴を繰り返して来たことだった。
これでは話が違う、というか、まったく安心できないではないか。
またもうひとつの安倍政権高支持率の「強み」というか、「他よりはマシ」と安心されて来た要素であった対米関係(とはいえオバマとの関係は最初から悪かった)も、昨年11月の米大統領選挙の意外な結果以来揺らいでいることは、メディアがいかに隠そうが(というかその切迫した努力が逆に作用して)、次第に普通の一般国民にも見えて来ているはずだ。
当選直後のトランプに慌てて会いに行ったのに、安倍政権が強力に押し進めたはずのTPPについて、トランプはそのほんの数日後に脱退を表明してしまった。
就任後の訪米・日米首脳会談も、フロリダのトランプの別荘に招かれた「特別扱い」のはずが、安倍がトランプと連携して対抗するはずだった習近平もそこに招かれ、トランプがしきりにこの中国主席との信頼関係をアピールしただけではない。
北朝鮮のミサイル危機が高まる中で、トランプはアメリカに代わって北と交渉してくれるであろう習に急接近し、思ったような成果が出なくとも(金正恩は中国の言うことを聞く気なぞ皆無であるか、少なくとも表面上は中国に従うように見えることは断固拒否し続けている)、「中国がベストを尽くしている」「習近平首席はいい人で、私は好きだ」とまでツイート等で連帯を表明する一方で、アメリカが北朝鮮とどう対峙するかについて日本が完全に蚊帳の外であることは、もはや隠しようもない。
トランプが安倍に「あらゆるカードがテーブル上にある」と言ったとき、日本のメディアは(安倍本人の期待に忖度して)米国が軍事行動すら辞さないかのように報じた。だが早々にマティス国防長官(これも日本メディアはなるべく隠そうとしたが、稲田防衛大臣との会談がアメリカに不信感しか与えなかったことは隠しようがなかった)が戦争なぞあり得ない、絶対に避けなければならないことを表明したところで、「あらゆるカード」が安倍の期待と真逆の意味だったことに感づいた人も少なくないだろう。
トランプはむしろ、自分が金正恩と直接対話することも、明らかに視野に入れている。というかトランプ本人はその気でいて、米国務省と国防総省がなんとか押しとどめようとしている一方で、交渉の出発点をどこに置き何を議論するのかのせめぎ合いが、米朝間で、そして米政府の内部でも続いているのが現状だ。
北朝鮮の危険性を煽るだけの日本の報道を見ているだけではそこまでは分からなくとも、都議会選とちょうど同時期になった韓国の新大統領・在文寅の訪米と米韓首脳会談の結果が安倍政権が国民に与えようと苦慮して来たイメージと真逆だったことは隠しようがない。安倍があれだけ親しさをアピールしようとして来たトランプは明らかに韓国の新大統領の方を信頼していて、米韓で合意に至らなかったこと(対北外交だけでなく、THAADの配備から経済関係に至るまで)をあえて共同声明に両論併記とし、米国が韓国の立場も尊重していることを表明したのだ。
そうでなくとも安倍があれだけ仲の良さをアピールしたトランプが、ロシアとのあやしげな関係を問われ政権危機にあることは、日本の新聞テレビも報じないわけにはいかない。ああも安倍が仲良くしようとし、そしてその仲の良さをアピールしたがり、メディアもその方針に忠実だった相手であるトランプは、どうも国際的にだけでなく、アメリカ国内的にもとんでもなく非常識で信頼できない、みだりに近づくべきでなかった大統領らしい。
いくら日本はアメリカの言いなりになっていればとりあえず安心、と思って来ていても、こんなトランプの言いなりになろうとする安倍の方針はさすがに危険なのではないか? しかも実際には安倍とトランプの「個人的信頼関係」どころか安倍が妙に下手に出て媚を売っただけ、トランプはひたすら下手に出るだけの安倍なぞどうせ言いなりになるのだから、わざわざ相手にする気もないと言わんばかりの態度だ。
アメリカの言うことを聞く政権なら日本はとりあえず安定し、安心できるから、「他に適当な人が見当たらない」ので安倍でいい、というもう一つの高支持率の理由も、あからさまにほころびを見せ始めている。
トランプに強引に解任されたジェームズ・コミー前FBI長官の議会証言が、日本国民にとって安倍政権が拒絶する前川喜平前文科次官の証人喚問とパラレルなものとして受け止められもした。安倍政権の下で、日本の政治はあまりに不公正になっていないか、という疑問がここでも広く一般国民に湧き上がっておかしくない。
安倍政権というのは、実は相当に危険に暴走した政権ではないのか、と遅ればせながら多くの国民も気づいてしまった結果が、「安倍辞めろ」「帰れ」コールであり、都議会選・自民23議席だったと言えるだろう。
さらに始末が悪いことに、こうしたスキャンダルが明らかになった時の安倍政権の対応が、日本人の道徳観では許容されないような、デタラメな汚らわしさまで暴露してしまった。
妻を通してあれだけ熱烈支援していた籠池泰典をいきなり裏切った上に(100万円の寄付を否定しようとムキになるのは、さすがにあまりに馬鹿馬鹿し過ぎた)、加計学園騒動となると今度はなんでもかんでも人のせい、それも文科省や内閣府の若手官僚に責任をなすりつけるのはあまりにひどかった。
そして「安倍の秘蔵っ子」はどうしようもなく幼稚な感情論に走るオコチャマなのに、自分の「秘蔵っ子だから」と無理矢理かばう安倍は、自民党内からも冷ややかな目で見られ始めている。
こんな身内だけが得する国の、いったいなにが「美しい国へ」だったのか?
極めつけは側近の都連会長は、ヤミ献金の誤摩化しの手口を堂々と記者会見で披瀝して「事実無根だ!選挙妨害だ!」って…バッカじゃなかろうか?
しかも、この下劣さはさすがに大手メディアはほとんど報じなかったが、下村博文都連会長はしかも、自分の元秘書の青年が都民ファーストから出馬したのを逆恨みして、その青年を泥棒でスパイ呼ばわりまでしてその「証拠」らしき「上申書」なるもののコピーを会見で配布していた。
いったいどっちが選挙妨害なのだ?
あまりに卑劣な上になにも学習していないらしい。内部文書の漏洩先を決めつけてその相手を人格攻撃したところで、文書自体の信頼性はなにも変わらないことは、前川喜平氏を貶めようとして失敗した一件で、嫌というほど学んだはずではないか?
不潔感しかなくなってしまった安倍政権と、昨年から勘違いした態度を続けてやはり不潔なおっさん集団っぷりを晒し続けて来た(思い返せば、以前にもセクハラ野次問題もあった)自民党都議団に対し、少なくとも小池と都民ファーストには、安倍とか下村とか萩生田官房副長官、山本幸三大臣みたいな汚らしいオッサンや、そのオッサンたち相手にプラトニック枕営業でえこひいきされているかわい子ぶりっこのオコチャマなおばさんは、ちょっと見当たらない。
小池百合子も本人は根本的に右翼的な思想の持ち主なのかも知れないが、それでも彼女には日の丸の小旗を振り回し、「あの人達に負けるわけにはいかない」なんて自国民に向かって叫ぶ総理に喝采する、アタマがおかしい敵意むき出しの変な支持層もいないか、少なくとも目立たない。
秋葉原の安倍演説では、「この人達に負けるわけには行かない」という安倍の暴言というか妄言以外にも、この政権の本質をいかにも象徴することがあった。選挙カーの上の演説席からよく見えるように広げられた「安倍辞めろ」の大きな幕の前に、つまり選挙カーからの視野を遮るように、「自民党青年団」ののぼりが並んだのだ。
選挙なのに、有権者にどう見えるのかは考えない。気にしていたのはこの「安倍辞めろ」が演説する安倍の目に入らないようにすることばかりだったのだ。
こうした政権の異様な体質は、自民党内の全体まですっかり毒してしまっているようだ。後藤田正純衆議院議員は「私自身が、自由民主党執行部はおかしくなってると感じたのは、私の安倍政権の反省についての街頭演説が、安倍批判をしたと、党幹部に伝わり私にクレームがきたこと」とブログに記している。
かつて日米開戦に至る歴史の流れのなかで、「これは勝てる戦争ではない」と客観的には誰の目にも明らかだったはずなのが、「そんな根性では勝てる戦も勝てぬ」と言わんばかりの雰囲気が政府や軍の内部で横行し、陸軍主戦派の主張が押し通される経緯があった。戦時中には日本軍が負け続けていることは「大本営発表」で国民に隠され、それでも「この戦争には勝てないのではないか」疑問を抱いただけで「スパイ」扱いされて「非国民」と誹られ、治安維持法で逮捕されることも少なくなかった。安倍政権は「戦前回帰」を目指しているとしばしば指摘されるが、こうなるとその戦前戦中の日本の出来の悪いパロディに近い。
都民ファーストの圧勝を「素人」とこき下ろしているヒマがあったら、自民党とその支持者は、反省すべきことがあるはずだ。そんな「素人」でも、安倍政権の4年半に毒されまくり、その異常性に無自覚なまま、なんでも他人のせいで愚にもつかない言い訳しか言えなくなっているあなた達よりは、はるかにマシなのだ。
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