最新作『無人地帯 No Man's Zone』(2012)
〜福島第一原発事故、失われゆく風景、そこに生きて来た人々〜
第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品
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6/02/2008

他者の都合が分からぬ外交音痴


中国・四川大地震に派遣された日本医療チームがもう帰国するそうだ。

本当に先方で必要がなくなったからなのかもよく分からないが、「自衛隊機派遣」騒動のとばっちりで置いておき辛くなったとか、そういう理由でないことを祈りたいけれど、どうなんでしょうね?

この数日間の騒動は、要するに町村サンがはしゃいじゃったのがいけない、としか言いようがない。中国側の外務当局が自衛隊の派遣も検討する意思を示したからといって、それは実務レベルの話合いに過ぎず、国防当局がどう反応するかを慎重に見極めなければいけない段階で「要請があった」と、これで中国に自衛隊が入れるとはしゃいでしまった神経、なんと外交というもの、とくに対中国の外交というものを分かってないド素人ぶりであることか、素人の一国民でも呆れてしまう。

コキントウさんが来日してからまだ一ヶ月も経っていないのに、そこで呆気なく合意のメドが立ってしまった東シナ海ガス田問題でも、合意内容をなぜ公表できなかったか、もう忘れているのだろうか? まだコキントウ政権が解放軍と話を詰めなければいけないから、先に発表して刺激するわけにはいかなかったからでしょうが。そこまで自分の政権基盤の不安定さを正直に明かしたコキントウ政権にもちょっと驚きだが、先走って日本側が報道してしまえば、可能性はあったことなのに潰すしかなくなってしまう。外交とは強気だろうが配慮に配慮を重ねる和解路線だろうが、相手の立場をじゅうぶんに考慮検討して手を打たなければ、意味がないのに。


まあ日本のマスコミにも責任の一端はある。自衛隊派遣の可能性ではしゃいでしまったのはマスコミも同じだし、それ以前にどう見ても相当に成果を上げた、まあ成功と言って差し支えのないコキントウ来日を、福田政権をこき下ろすためだけか(?)ずいぶん批判的に報道して、「レンタル料一億円払ってパンダが来る以外に成果がなかった」と決めつけてしまっていたので、町村サンとしても日中の関係の好転をひたすらアピールしなければ政権の人気に関わる、という焦りもあったのだろう。

だがそれにしても間が抜け過ぎている。あくまで災害救助で国際協力するという人道問題なのだから、建前だけでも淡々と人道的な立場だけを貫くべき問題なのだ。しかも政府チャーターの民間機でテントを運ぶことにしたら、その方が効率的に運べるというのだから、「いったいなんのための自衛隊派遣騒動だったのか?」と疑問がどうしても湧いて来てしまう。


ちなみにコキントウ来日の成果についていえば、こりゃいくらなんでも偏向報道で、日中関係の修復・好転は日本にとっても中国にとっても一致して利益になることであるし、関係の悪化は元々は主に日本側の責任だ。

いかに国内で勝手なことを言おうが、中国から見れば日本自身がその判決を受け入れた上で戦後の外交をやって来ている建前の東京裁判でA級戦犯とされた人間たちが祀られた施設に首相が参拝することは、信頼を踏みにじる嘘つき行為にしか見えない。その覚悟も無しに遺族会の票欲しさと派手なパフォーマンスで靖国参拝を強行した小泉純一郎がすべていけない、ということにしかならないのだ。

それが中国側から積極的に関係修復を持ちかけて来ている、そうせざるを得ない立場で来日をして来たときに、福田サンの気配りは完全に正しい大人の選択だった。

コキントウさん側の不手際で今ひとつおおっぴらに喧伝できる成果はなかったにしても、そこでコキントウさんをいたずらに責めたところで、せっかく日本が得られそうになった国益に反するだけだ。

それにパンダ一億円というのはまったく無根拠のガセに過ぎず、そもそもワシントン条約で商業取引が禁止されているパンダに「レンタル料」なんてあり得ない。だからこそ寄贈・贈与でなく貸与しかできず、名目上は共同研究にせざるを得ないのだから。で、施設によっては二頭を貸与されて合計一億円の研究費拠出をしている自治体がある(その金額の情報を出しているのは神戸市だけで、和歌山にいる6匹の金額は不明)というだけで「一億円」というただの推測が飛び交うのだからいったいどういう報道なのだろう? 実は上野動物園に関しては研究費用の拠出を中国政府は要請しておらず、無償になるというのが真相らしいのだが。


最大の懸案である東シナ海ガス田問題は日本側が呑める形での共同開発が決まったし(詳細はまだ、自民解放軍の了承をコキントウ政権が得てからだが)、中国側の必殺技の歴史問題カードは向こうに持ち出させなかったし、チベット問題についても刺激的な言い方を避けながらも一層の対話の努力を促し、オリンピックの出席についても言質を与えなかったのは日本の立場にとって成果だし、ギョウザ問題は未解決にしてもそれなりの圧力はかけている。

一方で東シナ海ガス田問題でまだ解放軍に話を通さなければならないとか、ギョウザ問題について来日までに解決のメドを中国政府内部の縦割り行政でつけられないままだったのは、コキントウ氏の政権基盤の脆弱さを示すことであり、今後の対中国外交について重要な教訓を得られたはずだ。

なのにそこをまったく理解せずに「自衛隊派遣」騒動である。参ったねぇ。

福田サンがアフリカ開発会議で忙しくて対応できなかったのもあるのだろうが、福田サンがいないと町村サンも外務大臣の高村サンも、防衛大臣・石破クンも、まったく政治的判断ができない無能ぶりを曝け出すのか? いや困った政権だよ、こりゃ。

福田さんは他の閣僚達と違って大人の国際社会の常識がちゃんと分かっているのはいいが、とはいえ福田サンも福田サンだ。当初からクラスター爆弾禁止条約に福田サン個人が賛成していることは噂されていた。結局最終的に彼の意向が大きく働いて参加が決まったのだが、福田サンがその意思を最初から表明していないせいで、対米従属しか頭にない外務省と防衛省が「日本は抵抗勢力か? アメリカのスパイか?」と参加国に思わせてしまうような優柔不断を延々とやって、最後でとつぜん意見を翻すという、実にみっともない格好になってしまった。


だいたい攻撃兵器にしか使えない、自身の主権が及ぶ国土に落とすバカなんているはずもないクラスター爆弾をなぜ日本が保有しているのか、というのが摩訶不思議としかいいようがないのだが、要するにアメリカの兵器製造業をもうけさせるために保有してただけなんでしょうけどね。

まあばかばかしい。それでどれだけ大金を注ぎ込んで、廃棄に今度はどれだけ税金をかけるのか? なに考えてるんだろ?


(写真はそれこそ「なに考えてるんだろ?」な外交政策の象徴、「おもいやり予算」で建ってる米海軍池子住宅をめぐる拙作『フェンス』から)。

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